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― さんまは人を救う ―



 統計によると、自殺をする人間は、クリスマスに最も多いのだという。
 たしかに十二月二十四日、街にはまばゆいばかりのイルミネーションが溢れ、クリスマスムード一色、その下で愛し合う二人がイチャイチャし合っているのかと思えば、恋愛などバカバカしいと常々笑っている僕にでもふと、死のうかな、なんて考えが頭をよぎることがある。
 家にいるのは苦痛だ。といって、外へは出られない。
 アルバイトは見栄をはって休んだ。
 結局、その寂しさを紛らわせてくれるものは、テレビということになる。
 しかしそのテレビが、実にたまらないことをしてくれている。
 デパートに飾られた巨大ツリー、テンションの高いレポーターの実況、サンタの着ぐるみを着てはしゃぐ芸能人、ベンチで肩を寄せ合う二人。
 それらの映像のどれもが、現実を見まいとする一人ぼっちの人間へ、悲痛な実態を突きつけてくることになる。悩める孤独な人間たちを、自殺へ踏み切らせてしまう真の要因は、意外とテレビにあるのかもしれない。

 しかしそんな中、一つだけまったく趣向の違う番組がある。
 フジテレビ『明石家サンタのクリスマスプレゼントショー』だ。
 イブの深夜に恒例となったこの番組は、電話をかけてきた視聴者から不幸話を聞いてまわるという内容で、司会はご存知、明石家さんまが務める。
 日本で最もクリスマスを謳歌していそうなこの男が、イブにテレビへ出ていると知った時は驚いたが、それから五年近くが経った今、僕はこの番組がなければ、二十四日を跨げる自信がないほどのものになった。
 クリスマスに不幸話と聞くと、陰気くさい雰囲気を想像してしまいがちだが、番組は終始陽気にあふれている。何より、電話で話している人間たちが楽しそうなのだ。
 さんまはナイスな不幸ネタを持ってきた参加者に、
「おめでとーうっ!」
 といって、元気よくジングルベルを鳴らす。
 考えてみればそこで、
「ありがとうございます」
 と返事をする参加者もおかしいのだが、あの場においては、不幸な人間こそが偉く≠ネってしまう。この価値の逆転は、僕がふとした気持ちから自殺をしてしまわなかった理由ででもあるだろう。
 イブの夜、僕は八時を過ぎたあたりから、この番組のことを考え始める。そしてそれがあるからこそ、このつらい時間をどうにか凌げるような気がする。『明石家サンタ』は、実は放送前から僕らの面倒を見てくれているのだ。
 高一の頃、クリスマスに一人ぼっちでいた僕は、何だか生きていることのすべてを否定されたような気持ちになった。しかしこの番組で、さんまが不幸話を、完全に「笑い話」として話していた時、僕は全面的に肯定された気がした。
 大学三年の今年。きっと気がつけばまた、次の日が来ていることだろう。
 僕は彼こそ、本当のサンタクロースだと思う。




 

 


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